ビジネスや観光、買い物や病院通いなどの生活の足として頼りにされるタクシー。近年のタクシー業界はデジタル化や法規制などで、働き方も大きく変化している。富山市で63年の歴史がある『北日本モーター株式会社 大和交通』に転職した乗務員・尾﨑 正和さん(51)の働きぶりを通し、知っているようで知らないタクシードライバーのリアルに迫った。
営業職からキャリアチェンジ
タクシー業界は、異業種からの転職やセカンドキャリアの活躍の場として、未経験で飛び込む人が多い。尾﨑さんもその一人で、建築系の営業マンから転身し、もうすぐ1年になる。丁寧な接客と安全・迅速な運転で、お客様から“ご指名”が入るほど。すでにベテラン勢と肩を並べ、売上トップを争う期待のドライバーだ。
尾﨑さん:思い切って違う業種に転職しようと考えていた時、求人誌で「タクシー運転手募集」が目につきました。営業で県内を車で回っていたので、道はなんとなくわかる。会社も自宅から近く、いつも生き生きと働くドライバーさんに好印象がありました。運転は好きだし、いろいろな人と関わり合える。何より「地域の方々に貢献できる仕事」が一番の魅力でした。
挑戦する気持ちが大きく、不安はなかったと語る尾﨑さん。前職ではノルマや残業が多く、休日出勤も多かったそう。それが一切なくなり「ストレスから解放され、体調もよくなり、転職してよかった」と、晴れ晴れとした表情。営業で培ったトークやコミュニケーション力が、今の仕事に役立っている。
『大和交通』では、タクシードライバーに必要な二種免許を、入社後にグループ企業の『呉羽自動車学校』に通い、会社負担で取得できる。本試験の合格が見込めた時点でお客様を想定した10日間の研修を行い、独り立ちする。
隔日勤務&歩合制で自分らしく働く
ドライバーの働き方は、日勤・夜勤・隔日勤務の3パターン。資格を取れば運行管理者の選択肢もある。子育て中の女性ドライバーは日勤、配車が一番動く時間に絞りたい人は夜勤といったように、選べるのがいいところ。尾﨑さんは“一番バリバリ稼げる隔日勤務”を選択。1日丸々働き、翌日は完全1日休み。さらに月に3連休が2回、2連休が2回ある。休みがしっかりしているのでプライベートも充実。ワークライフバランスが取りやすい。
尾﨑さん:休みの日はまず体を休め、妻や母の買い物につきあったり、連休の日は友人と一緒に大好きなお酒を楽しんだりと、リラックスして過ごします。働き方は人によって違いますが、自分は稼ぎたいので少し長め。朝5時半起床、7時前後に出社、点呼やアルコールチェックをして7時過ぎに出発。深夜1、2時頃に帰社し、洗車や日報を出して帰宅します。拘束時間が長いと感じるかもしれませんが、強制ではなく、自分のペースで回せるので疲れません。昼は会社の休憩所か出先で。食堂やラーメン屋を巡るのも気分転換になって楽しみですね。隔日勤務は昼と夜、どちらのお客様とも関われるのがいいです。
自分自身の判断で動き、自由度が高いタクシードライバーは “個人事業主”の感覚。『大和交通』の場合、給料は年齢や社歴に関係ない完全歩合制だ。
尾﨑さん:やればやった分だけ成果になるので、やる気が出ます。個人タクシーと違って“会社”なので、OJT研修や講習で支援を受けられますし、観光などまとまった貸切の仕事を順番に回してもらえる安心感もあります。当社は地域に浸透し、マスコミや企業のVIPなど固定客が半数を占めるのが特徴。会社のブランド力も心強いです。個人事業主の自由さもありつつ、会社からの手厚いサポートを受けられるという点でも『大和交通』に入って良かったと感じます。
未経験・転職者に優しい職場環境
タクシー業界のデジタル化も進み、『大和交通』では自動日報やキャッシュレス化、GPS-AVM配車システムの導入などでドライバーの負担を軽減し、働きやすい環境を整えている。
尾﨑さん:他社さんは手書きで日報をつけていますが、自動日報は出発する時にメーターにカードを差し込み、帰社して機械に差すだけ。精算や運行経路などが全部でてくるので楽です。煩わしい業務は機械がやってくれるので、安全運転とお客様との接客に集中できます。
社内の雰囲気も気になるところ。どんな方が多いのだろうか。
尾﨑さん:男性は50代以上の方が多く、60代から第二の人生としてタクシードライバーを選んだ人も。女性のドライバーさんも増えていて、和やかな雰囲気です。古いしきたりや締め付けがない。面倒見のよい人が多く、同僚や先輩方とつながりも持てる。ほどよい人間関係がいいですね。若い方も年配の方も男女問わず、今の仕事に悩んでいる方、時間の融通が必要な方にぜひ挑戦してほしい。営業や接客経験のある方はもちろん、経験がなくても気配りやコミュニケーションがとれれば大丈夫です!
地域密着!「大和交通でよかった」と言われたい
現在は「アルファード」のタクシーのハンドルを握る尾﨑さん。時には芸能人を乗せることもあるそう。「普通のお客さんと同じように接しますが、楽しみの一つ」とにっこり。観光やビジネスで訪れた方を案内することも多いそうで、お勧めスポットをうかがった。
尾﨑さん:富山市内では岩瀬のまちめぐり。天気が良ければ呉羽山や市役所の展望台。会社近くの穴場では「石倉町の延命地蔵の水」を楽しんでもらっています。五箇山や雨晴海岸までご案内することも。お勧めの飲食店もよく聞かれますね。趣味と実益を兼ねてリサーチし(笑)自分がよく行くお店を紹介して「美味しかったよ」と言われるとうれしいです。
地元で働くことの良さは、地域のお客様に関わり、喜んでもらえること。そしてタクシードライバーという仕事を通して、県外から来られる方に、富山のよさ・魅力をもっと伝えたいと尾﨑さんは意気込む。今後は、富山県認定の「おもてなし優良タクシードライバー」や、バスなどの大型二種免許の資格取得も見据えてスキルアップを図り、お客様に「大和交通のタクシーに乗ってよかった」と言われるドライバーを目指す。