全国技能競技大会「ATC」で堂々入賞の凄腕エンジニアにクローズアップ!

毎年10月、石川県小松市で開催されるATC(Advanced Technic Contest)。厳しい選考を勝ちぬいた日本国内のコマツディーラーの精鋭たちが、技術や能力を競いあう全国技能競技大会だ。2023年、そんなATCの「溶接の部」において、初参加ながら好成績をおさめたのが矢後 正吹さん(43)。当時を振り返り、いま感じることなどいろいろと語ってもらった。

溶接のプロが挑む技と技の真っ向勝負

矢後さんの仕事は油圧ショベルをはじめとした建設機械の修理。摩耗したバケットに厚みをだしたり、折損したアームをつなぎ合わせたり、さまざまな修理にさまざまな溶接技術をもって対応している。そんななか、ふいに湧きあがったのが「自分の溶接技術の現在地は?」という疑問。これを探るべく、挑んだのがATCだった。

矢後さん:ATCに出場できるのは地区大会で好成績をおさめた上位2名。『コマツ富山』が所属する中部地区は全9社約20名で競い合ったのですが、社内選考を勝ち抜いただけあってみなさん精鋭揃い。とても緊張しました。

緊張しつつも実力を発揮し、上位2名にくいこんだ矢後さん。見事、ATCへの出場を決めたわけだが、その競技内容はいったいどのようなものだったのだろうか。

矢後さん:図面の指示に従って溶接を行うというものです。寸法の正確さや仕上がりの美しさを制限時間内にどこまで追求できるかで順位が決まります。ちなみに、競技終了後、発表されるのは順位だけ。どのような評価項目があって、どれほどの評価点がついたのか、まるで分からないのもATCの特徴です。

評価基準が明かされないなか、クオリティもスピードも求められる。日本国内のコマツディーラーの精鋭たちが一堂に会し競い合うだけあって、大会のレベルはかなり高そうだ。

全社一丸となりあの手この手でサポート

並みいるライバルを押しのけ、矢後さんが獲得したのは「溶接の部 優秀賞」。2位にあたる好成績だが、これほどの結果を得るにはかなりの練習が必要だったのではないだろうか。

矢後さん:競技用の溶接機をレンタルしてもらったり、社内の機材や設備を使わせてもらったり、会社のバックアップがあったおかげで充実した練習ができました。直属の上司も「仕事の責任は私がとるから、気のすむまで練習しなさい」といってくださったほか、そのまた上司も「矢後をサポートしてやりなさい」といってくださったと聞いています。同僚もアドバイスやエールをくれました。

他にも、応援ポスターを制作してもらったり、SNSでPRしてもらったりと、職位や職域の枠を超えたワンチームでのサポートがあったのだそう。プレッシャーは感じなかったのか気になるところだが、はたして。

矢後さん:プレッシャーはバンバン感じていました(笑)。 けれど、それ以上にうれしかったですし、励まされましたね。出場できなかった方たちに恥ずかしくない競技内容にしなければと、決意を新たにもできました。 さらに、「この年齢でこんな挑戦をさせてもらえてありがたい」とも語ってくれた矢後さん。矢後さんの真摯さ、そして、『コマツ富山』の手厚さがあったからこそ、これだけの結果を得られたに違いない。

個人にも組織にも生まれたうれしい変化

ATCに初出場してから約1年。ハイレベルな競技を経験し、輝かしい賞を受賞してどんなものを得られたか、聞いた。

矢後さん:ひとつは、お客様満足の向上です。受賞者が修理を担当することで、お客様にさらに喜んでいただけるようになりました。もうひとつは、エンジニアのレベルアップです。ATCへの出場を目指すエンジニアが私以外にもでてきたことで、切磋琢磨する環境が生まれて技能の底上げにつながるようになりました。

矢後さんから語られたのは、ATCへの出場によってもたらされた会社の変化。では、矢後さん自身に変化はもたらされたのか。

矢後さん:結果をだそうと鍛錬を続けたことで、苦手を潰して得意を伸ばせました。あとは、営業のみなさんが「受賞者が修理を担当する」というふれこみで仕事をとってくるので、「お客様を失望させるわけにはいかない」「お客様の期待にこたえたい」とさらなるやりがいを感じながら仕事ができるようになっています。

聞くほどに語られるいくつもの好影響。矢後さんにとっても、『コマツ富山』にとっても、ATCへの出場はかなり大きな意義があったようだ。

慢心せず邁進するエンジニアであるために

『コマツ富山』を代表するエンジニアとしてさらなる活躍が期待される矢後さん。今後の目標を聞くと、驚きの答えが返ってきた。

矢後さん:じつは、昨年に引き続き、今年もATCに出場することになったんです! いまは、練習、練習の毎日。大変ではありますが全力で取り組み、結果につなげたいと考えています。そして、それは日々の業務も同じ。自分が修理したものが壊れるとお客様の信用を失いますし、場合によっては安全・安心を損なうので、「優秀賞を受賞したから」と慢心せず、どんなときも真剣に誠実に仕事をしたいとおもっています。

さらには、「自分の技術や経験を伝えていけたら」という目標も。

矢後さん:伝えられることはどんどん伝えていきたいですね。相手のスキルが高まるのと同時に、言語化することで新たな気づきが得られ、自分のスキルが深まるのを感じるので。

後進の育成にも自分の成長にも余念がない矢後さん。まずは、間近に迫ったATC、どのような活躍を見せてくれるのか、いまから楽しみでならない。